【創作】《短編》リウセイアフター
星降った夏の夜。
私と祐一は、家路を歩いていた。
流星群。初めて、ちゃんと目にした。
祐一は、そういうものに目を向けさせてくれる、そんな人だったから。
そんなロマンチックなものは、心のどこかで距離を置いていた。
何だか、ほら、恥ずかしいし。それより即物的なものの方が、オンナノコなら求めるみたいな先入観、オトコノコの間じゃ、あったりするじゃん。
確かに、買い物に行ったり、美味しいモノを食べたり、そういうことの方がデートには相応しい感じもする。
星を見に行く、なんて、ちょっとした物語みたい。
でも、祐一はあまりに自然と、私を誘い出してくれた。
二人、行きに初めて通った道を、確かここを通ったねなんて確認しながら歩く。
星が綺麗に見える、祐一が私に教えてくれた秘密の場所は、そのために人工の光が少なくて、そこまでの道のりも、私の知っているどんな場所よりも薄暗かった。
何だか、私は不安になった。
躓いてしまいそう、そんな表向きの不安と、思い出してしまいそう、そんな本当の不安。
左手が、自然と胸元に来る。
「わっ!」
同時に、右手に、感触。
「俺だって」
「び、びっくりしたじゃん」
「ごめん」
右手に触れたのは――繋がれたのは、祐一の手。
「何、どうしたの」
「明香莉、今、不安がってたから」
「え」
その一音だけで、祐一は私の(どうして分かったの? こんなに真っ暗なのに)という思いを読み取った。
「暗いところ、苦手じゃん?」
明るい声。
祐一はそう言ったけど、それが本当の理由じゃないのは分かっていた。
きっと祐一には、私が、手を胸に当てようとするのが分かったんだ。なんで分かったの、って掘り下げて聞いたら、多分、「何となくだよ」なんて答えて、本当にそうなんだろうけど。
「大丈夫、明香莉には、俺がついてる」
みんな、一度は口にした言葉。
一人目は信じちゃって、二人目は半信半疑に聞いて、三人目からは話半分にしか聞かなかった。
これだって、信じちゃう、のかもしれないけど、オトコノコを分かってしまった気でいる私が、それでも信じてみたいと思った。
騙されていても構わない、じゃない。
そんな自暴自棄の想いじゃなくて、「私のこと、託したよ」って、そんな一世一代の想い。
「オンナノコみたいなこの手に、私が守れるかなあ?」
「ぐ、そこは、精進するよ」
「筋トレ三日も続かないのに?」
「明香莉も一緒にやってくれたら、きっと続くよ」
「え、私を巻き込むんデスカ」
「明香莉も、食べないダイエットより、筋肉付けて、健康的にやせるダイエッ――痛い、痛いよ」
「この程度力入れただけで痛がる時点で、まだまだ弱っちいの」
「だから、精進するんだってば」
「ご褒美あるなら、考えるよ、一緒に筋トレ」
「うん、じゃあ、考えよう」
バカップルと、将来性のある恋人同士の会話と。その境界は、どこからなんだろう。
私たちのコレも、大体の人からしたら、間違いなく前者なんだろうけど。
祐一がここまで言ったら、きっと、ずっと続いていく、そんな自信が持てる。
「守ってね、ずっと」
星降った夏の夜。
いつの夏も、星は輝いていたけれど。
今日やっと、私の記憶に、綴じられた。
祐一が、私の手を、繋いでいてくれるから。
*
タイトルからも気に入っている作品です。
あまり明るいものは書かないのですが、これはしっくりきた珍しい作品です。